医療機関がDXに取り組むための秘訣とは? 〜AIとデジタルを医療現場で活かそう〜|セミナーレポート

 
医療DXの重要性が高まる中、多くの医療機関が具体的な取り組み方に悩んでいます。2024年6月21日、株式会社DTGは「医療機関のDX」をテーマとしたオンラインセミナーを開催しました。赤羽もりクリニックの院長で腎臓内科医の森維久郎先生をトークゲストに迎え、株式会社DTG代表の岩本とトークセッションを行いました。本記事では、セミナーレポート当日の内容から、医療DXの実践例と効果的な導入方法をご紹介します。
 
 

セミナー概要

日程:2024年6月21日(金) 開催場所:オンラインZoom テーマ:医療機関のDX 講師:岩本修一(株式会社DTG代表取締役CEO/おうちの診療所 医師 ) トークゲスト:森維久郎(赤羽もりクリニック 院長) DTGセミナーとは 医療機関における「DX」「採用」「組織・人事」「在宅医療」の4つのテーマで、定期的にセミナーを開催しています。講師による講義とゲストとのトークセッションで構成された1時間のセミナーです。Peatixにて開催告知を行っています。
 
 

ゲスト紹介

◆ 森維久郎先生
赤羽もりクリニック 院長/腎臓内科医
<経歴> ・三重大学医学部医学科卒業 ・東京医療センター研修医 ・千葉東病院 腎臓内科・糖尿病内科 ・東京北医療センター 総合内科/腎臓内科 ・ふくだ内科
 
 

講師紹介

◆ 岩本修一
株式会社DTG 代表取締役CEO/おうちの診療所 医師
<略歴> 広島大学医学部医学科卒業後、福岡和白病院、東京都立墨東病院で勤務。2014年より広島大学病院総合内科・総合診療科助教。2016年よりハイズ株式会社にて病院経営およびヘルスケアビジネスのコンサルティングに従事。2020年よりおうちの診療所でCXO・医師として経営戦略、採用・人事、オペレーション構築、マーケティング、財務会計と在宅診療業務に従事。2021年10月株式会社DTGを創業、代表取締役CEOに就任。
 
 

現場と経営をラクにする!医療DXの実践

セミナー前半では、DXに関する解説と医療機関でのデジタル活用事例が紹介されました。DXはデジタイゼーション、デジタライゼーション、狭義のデジタルトランスフォーメーションの3つを合わせて「デジタルトランスフォーメーション(DX)」といわれています。
 
  • デジタイゼーション:紙やモノをデジタルにする
  • デジタライゼーション:業務プロセスにデジタルを組み入れて効率化する
  • (狭義の)デジタルトランスフォーメーション:組織や組織文化にまでデジタルが浸透した状態
 
医療機関におけるDXの意味としては、経営と現場を楽にすること、業務フローを作り変えて手間を減らすこと、問題解決を迅速化することが挙げられます。今回のセミナーでは「経営と現場を楽にする」ことに焦点を当てて話が進められました。
近年、医療機関でもつかえるデジタルツールの活用は増えています。たとえば、GoogleやMicrosoftのサービス、会計や予約システム、オンライン診療などです。森先生が経営する赤羽もりクリニックでも、Google関連のサービス、会計や労務業務のソフトを導入し、さらにChatGPTの活用も進んでいます。DTGの岩本が所属しているおうちの診療所でも、FAXやメールをSlackに転送する仕組みをつくり、電話転送システムを導入して固定電話でのやり取りを減らしています。また、訪問ルートとスケジュールを管理するサービスである「CrossLog(クロスログ)」も活用しています。
 
 

DXは業務改善と教育に大きな効果をもたらす

医療機関がDXに取り組むことで、「業務改善」と「教育」に大きな効果をもたらします。業務改善では、中心的職員の負担軽減と時間創出が可能になり、教育では新人職員の業務取得が容易になることで早期戦力化が期待できます。 森先生は、クリニックにおけるルーチン業務の自動化を進めることで「院長や役職者が患者さんと向き合う時間を確保することができた」と話します。中心的職員の負担が軽減し時間が創出されたことで、診療に集中できるようになったのです。 経営課題が明確なときは、それを起点にDXを進めることが成功の秘訣です。ただし、意思決定者がプロジェクトに直接関与しない場合、プロジェクトの途中で経営上の課題が変わることがあるため、プロジェクトの初期段階で課題や目的の合意形成を丁寧に行うことが重要です。
 

実践!「ワークフローシステム」と「生成AI」を使ってみよう

セミナー後半では、実際の「ワークフローシステム」と「生成AI」のデモを通じて、その使い方を学びました。これらのツールは、経済的にも気軽に導入できる上に、使って楽しいという利点があります。

ワークフローシステム

まずは、ワークフローシステムについてです。ワークフローシステムとは、業務の流れに沿って設計されたシステムで、簡単に言えば「業務マニュアル」の進化版です。省略して「ワークフロー」と呼ぶこともあります。 多くの医療機関が業務マニュアルを作成していますが、更新されていなかったり、実際の運用がマニュアルと異なっていたりして、職員に上手に活用されていないことも少なくありません。現場に”センス”の良い人がいるかどうかで、マニュアルの運用がうまくいくかどうかが決まってしまうところがあります。そもそも、業務マニュアルを片手に作業をするのは医療機関の業務にあまり適していないかもしれません。 ワークフローシステムをつかえば、業務マニュアルをちゃんと活用できるようになります。
ワークフローを活用するメリットは、以下の点が挙げられます。
  • マニュアルを見に行く手間が省ける
  • 読む負担が軽減される
  • 効率的な教育や業務の引き継ぎが可能になる
  • ”センス”をシステムで補える
  • 運用変更を反映しやすくなる
ワークフローシステムを導入すれば、教育係がマンツーマンでつかなくても流れを確認することができるようになります。システムのログインURLや、詳細な説明文書をリンクとして上手に配置すれば、リンク先や情報を探す手間を減らすこともできます。 具体的な活用事例としては、新入職員のオリエンテーション、レセプトチェック業務、経理や人事業務などが挙げられます。
 
 
 
森先生のクリニックでは、週に1回の忘れがちな業務に対して効果的な管理システムを導入しています。「今日は◯時に〇〇をする日です」という通知が、職員全員が閲覧できるSlackチャンネルに送信されます。これにより、全スタッフが業務の進行状況を共有し、把握することができます。さらに、各タスクの「完了ボタン」を押すことで達成感が得られるよう設計されており、これが職員のモチベーション維持にも一役買っています。 おうちの診療所ではNotionを活用し、マニュアルが編集されるたびに、自動的にSlackへ通知が送られるシステムを構築しています。この仕組みにより、マニュアルの更新作業の可視化が実現され、常に最新の情報が全職員に共有されるようになりました。
 

生成AI

続いて、生成AIについてです。生成AIは、近年その進化により精度が向上しただけでなく、用途限定(カスタマイズ)も可能になりました。これにより、自由度が高すぎて使いにくかったAIチャットボットを、用途を限定することで活用できるようになりました。 AIチャットボットは、「物知りな人が引っ張りだこになる問題」と「院内に答えがあるのは知っているけどそのままにしておこう問題」の解決策として有効です。院内知識人のコピーロボットを作るようなイメージです。 AIチャットボットはワークフローシステムのように使うこともできます。忘れがちな業務や、ベテランでなければスムーズにできない業務に対して、注意事項などのファイルを裏側に組み込むことで効果的に活用できます。
実際の臨床での活用事例を紹介しました。 在宅医療では、Performance Status(パフォーマンス・ステータス)や寝たきり度などを評価し、カルテで随時更新する必要があります。この評価に生成AIが役立ちます。DTGで開発した「在宅医療ケアアシスタント(GPTs)」は、患者さんのADLなどの状態を入力すると、評価結果のレコメンドをもらえるAIボットです。たとえば、「寝たきりで、座位はとれる。意思疎通はOK 服薬は介助必要」と入力すれば、「意思疎通はOKでありながら、服薬は介助必要という点から、日常生活に介助が必要であるPS 4が適切です」などの提案をもらえます。レセプト上の加算をとるためのアナウンスや、個人情報入力のアラートも表示され、従来よりも高度かつ効率的に評価をおこなうことができるようになりました。 森先生からは「雑多な情報を構造化するのにChatGPTはおすすめです」とコメントがありました。たとえば、「患者さんのことを話すので紹介状にしてください」という指示を与えると、音声情報から特定のフォーマットに落とし込んでくれるので、非常に有用なのだそうです。 実際のデモをさわりながら、「こんな使い方もあるんですね!」「あんな使い方も試してみたい!」「それ、うちでも取り入れみよう!」など、終始盛り上がりをみせました。
 
 
 

まとめ

今回のセミナーでは、医療機関がDXに取り組むための秘訣として、「DXは経営と現場を楽にするもの」というメッセージが伝えられ、具体的な効果や実践方法についても説明がありました。「ワークフローや生成AIを取り入れることで、医療現場がより楽に、より楽しくなるようにできると思うので、ぜひ参考にして活用してみてはいかがでしょうか」というメッセージで締めくくられました。 本記事では、医療DXの重要性と具体的な実践方法についてご紹介しました!
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