医療機関の採用をデザインする 〜自院に合った人材を採用するメソッド〜 |セミナーレポート
採用活動がうまくいかず、自院に合った人材をなかなか見つけることができないとお悩みではありませんか?
2024年7月16日、株式会社DTGは「医療機関の採用をデザインする」をテーマにオンラインセミナーを開催しました。トークゲストには、そよぎハート&ライフクリニック湘南平塚の院長で循環器内科医の村本容崇先生と、ほーむけあクリニックの院長で家庭医の横林賢一先生を迎え、DTG代表の岩本とトークセッションを行いました。本記事では、セミナー当日の内容から、医療機関の採用の事例をもとに実践的な方法をご紹介します。
セミナー概要
日程:2024年7月16日(火) 開催場所:オンラインZoom テーマ:医療機関の採用 講師:岩本修一(株式会社DTG代表取締役CEO/おうちの診療所 医師 ) トークゲスト:村本容崇(そよぎハート&ライフクリニック湘南平塚 院長)、横林賢一(ほーむけあクリニック 院長)
DTGセミナーとは
医療機関における「DX」「採用」「組織・人事」「在宅医療」の4つのテーマで、定期的にセミナーを開催しています。講師による講義とゲストとのトークセッションで構成された1時間のセミナーです。Peatixにて開催告知を行っています。
トークゲスト紹介
◆ 村本容崇先生
そよぎハート&ライフクリニック湘南平塚 院長
循環器内科医
<経歴> 2003年信州大学医学部卒。飯塚病院にて初期研修、同院の循環器内科を経て、2007年より国立循環器病センター心臓血管内科レジデントとして循環器診療を学ぶ。2010年より平塚共済病院心臓センター、循環器内科に勤務。不整脈診療(カテーテルアブレーション、デバイス治療)を主として、多職種心不全チームの立ち上げ、心臓リハビリテーションなどに従事。2024年5月より、そよぎハート&ライフクリニック湘南平塚を開設。
◆ 横林賢一先生
ほーむけあクリニック 院長
家庭医
<経歴> 2003年広島大学医学部卒。麻生飯塚病院(福岡)にて初期研修,CFMD(東京)にて家庭医療後期研修および在宅フェローシップ修了。10年より広島大学病院総合内科・総合診療科教員。同年、広島大学家庭医療後期研修プログラムを立ち上げディレクターに就任。15年よりハーバード公衆衛生大学院に留学し,健康の社会的決定要因等に関する研究を行う。17年にコミュニティカフェ(Jaroカフェ)を併設した有床診療所(ほーむけあクリニック)を開設。
講師紹介
◆ 岩本修一
株式会社DTG 代表取締役CEO/おうちの診療所 医師
<略歴> 広島大学医学部医学科卒業。福岡和白病院、東京都立墨東病院で勤務。2014年より広島大学病院 総合内科・総合診療科 助教。2016年よりハイズ株式会社で病院経営およびヘルスケアビジネスのコンサルティングに従事。2020年1月よりおうちの診療所目黒でCXO/医師として経営参画し、採用の体制と運用を構築。2021年10月より株式会社DTGを創業し「採用体制の構築・運用支援サービス」を医療機関に提供している。経営学修士。採用を体系的に学ぶ会修了。
採用要件と採用活動のデザイン
採用活動は、優れた人材を採用するための一連のプロセスを指します。これは、求人の公開、採用広報、書類審査、面接審査などを含みます。最大のポイントは「採用要件を明確にし、それに基づいた採用活動をデザインすること」です。一貫性のある採用活動を実施することで、ミスマッチを減らすことが期待できます。
採用要件
採用要件とは、「採用しようとしている人に対して求める能力や条件を関係者で合意し言葉で表したもの」です。つまり、「自院にとっての理想的な人材」を明確に定義することです。
具体的には以下の条件が含まれます。
- どんな業務・役割を担うか
- どんな能力を持っているか
- どんなマインドや人柄を持っているか
- どんな報酬・雇用条件で雇われるか
これらの条件は、現在の採用市場を考慮し、関係者間で合意された人材像である必要があります。理想通りにいかないこともありますが、理想の形を表現しておくことが重要です。
採用要件に基づいた採用活動
採用要件が明確化したら、それに基づいて採用、広報、選考、入職後の教育を設計することが採用活動の成功の鍵です。
採用要件を定めた上で、以下のプロセスを進めていきます。
- 求人の公開
- 応募の受付
- 選考(書類審査・面接審査)
- 内定
- 入職
- 入職後のフォローアップ
事例紹介|そよぎハート&ライフクリニック湘南平塚
2024年5月、神奈川県平塚市に開業した「そよぎハート&ライフクリニック湘南平塚」の事例をもとに、実際の採用活動について解説していきます。
採用面接を3週間後に控えたある日、院長の村本先生からDTGの岩本に「3週間後の採⽤⾯接に向けて、どうすればうまくいきますか?」と相談がありました。岩本は、「3週間で、できる限り良い採⽤・良い選考を⾏えるように、⾯接当⽇を万全な状態で迎えられるように、できることをやりましょう!」と伝えました。
当初、村本先生は「3週間で準備するのは無理なのではないか」と不安に感じていましたが、岩本の「大丈夫ですよ!やれることに集中してやりましょう!」という言葉で勇気づけられたと話します。
採用活動のスケジュール
採用活動は、以下のスケジュールで行われました。
ゴール設定と結果
採用活動のゴールは、「できる限り良い採用・良い選考を行い、面接当日を万全な状態で迎えること」としました。その結果、目標の11人の採用を達成しました。さらに、採用コストの削減、採用の質向上、採用ノウハウの蓄積といった成果も上げることができました。
村本先生は、「思ったより良い人が多く集まったため、当初の予定より枠を広げて採用することになりました。今振り返ると、そうしておいてよかったと感じています。また、立ち上げメンバーにも採用活動に加わってもらったことで、モチベーションが上がり、3人の結束力が高まったのも副次的に良かったです」と当時を振り返ります。
実際の採用要件
Day7で決定した採用要件は以下のようなものでした。
- 経験(臨床経験3年以上)
- 技術
- 身なり、行動
- コミュニケーション(わからないときに聞ける)
- マインド(1. チーム精神 2. 患者に寄り添う 3. 学ぶ意欲)
- 条件面
村本先生は、「岩本先生にコーチング的にどんどんと質問を投げかけてもらいながら、特にマインドの部分について丁寧に話し合いました。実際の面接でも、この基準に沿って選考しました。応募を出す段階で採用要件を明確化できたので、マッチングの点でも良かったです。技術面は最低限のラインを設定し、それ以上にマインドや理念に共感してくれる人を採用しようとしました」と話します。
ほーむけあクリニックの横林先生も、「私は当初、自己流で採用をしましたが、人材の採用は最も大変な部分です。村本先生のお話を伺いながら、マインドベースの採用は素敵だと感じました。ほーむけあクリニックでは、マインドや人柄が合っていそうかどうかをお互いに確認するために見学を必須としています。実際に半日程度現場に入ってもらった後に面接を行うのです。これにより、マインドやコミュニケーション能力を重視した採用が可能になりました。即戦力が必要な場合でも、最終的にはカルチャーフィットが重要だと感じています」とコメントしました。
採用要件に基づいた採用活動
そよぎハート&ライフクリニック湘南平塚では、採用広報の面で、Notionを用いて採用ページを作成しました。豊富な情報とシンプルなデザインで、院長メッセージや募集要項、応募フォームなどを掲載し、最新情報を反映させました。これにより、候補者が事前に自院の考えを知ってくれて、面接でも前置きをせずとも深い話に入りやすくなりました。
村本先生は、「クリニックがまだ完成していない中で、自分たちのビジョンを伝えるのは難しかったですが、写真付きの紹介や具体的な採用スケジュールを見せることで、多くの応募者が興味を持ってくれました。採用ページを通じて、私たちの理念や目指す方向性を明確に伝えられたことが大きかったですね」と手応えを語りました。
また、評価シートを用いて採用要件に基づく面接や選考プロセスをデザインしました。
実際の面接は、村本先生と2名の立ち上げメンバー、2名の開業コンサルタントの計5人で実施しました。面接で確認したい要件を観察・評価できる環境を整え、総合的な判断ができるようにしました。
結果として、予想を遥かに超える応募者の中から、素晴らしいスタッフを選考することができました。村本先生は、「初めてのことだったので不安もありましたが、採用要件に基づいて面接を設計し実施できたこと、1回目の面接の後に岩本先生と振り返りをおこない、2回目以降の面接につなげたことが大きかったです。最後には自信を持って採用活動ができるようになっていました」と振り返ります。
横林先生は、「候補者は地域住民であり、その後受診される可能性もあるため、やむなく選考でお見送りとなった場合にも丁寧な対応を心がけています。また、開院後の採用活動では、職員紹介制度を設けて、職員が候補者を探し採用活動に協力してくれるように促すなどの工夫をしました」と、ほーむけあクリニックでの実際の様子を教えてくれました。開業時と開業後の採用活動に違いがあることについてもディスカッションがありました。
まとめ
採用活動は、医療機関の未来を左右する重要な取り組みです。本セミナーを通じて、「採用要件の明確化」と「それに基づいた一貫性のある採用活動」が成功への鍵であることを強調しました。村本先生と横林先生の事例が示すように、これらの取り組みは確実によい採用につながると考えています。
また、採用のミスマッチを減らすことは、単に個々の医療機関の問題解決にとどまりません。それは、スタッフの満足度を高め、医療の質を向上させ、ひいては医療業界全体をより良いものに変えていく力を持っていると信じています。
本記事では、医療機関の採用活動の重要性と具体的な実践方法について解説しました。それぞれの医療機関にあった個別性の高い採用活動も、適切なサポートがあれば確実に成果を上げることができます。私たちDTGは、貴院の採用活動をより良い形にするために全力でサポートいたします。